なんて気障な!
そんな事されたら嫌でも意識するじゃないか!
2/14、世間ではチョコレートの飛び交う甘い香りの漂う日。
今年は日曜日で、僕にしてみればただの休日だ。
くれる相手は居なくもないけど、たぶん貰えるのは15日。
そしてきっとヒメサマンチョコだと思う。
そんな休日。
なのに何故か僕は今、
「呼び立てて悪かったな」
眉間にひび割れを起こしているヒラヒラ検事の執務室にいる。
「別に。どうせ暇だしね」
僕の返事にふっと笑う。
そんな仕草さえ気障だ。
「今日はキミに渡したいものがあってな」
そう言って、赤スーツの幼馴染みは戸棚を漁る。
「珍しいね。御剣がなんかくれるなんて」
茶化してみれば、ム、と何か言いたそうに口元が歪む。
「キミが好みそうだと思っただけだよ、成歩堂」
受け取りたまえ、と差し出されたのは上品な紙に包まれた薄い箱。
「開けてみても?」
控えめに聞いてみる。
御剣は好きにしろと頷いた。
包装紙を破らないように慎重に開けていく。
箱の中には丸い缶がひとつ。
缶のラベルにはTEAの文字。
「…紅茶?」
「あぁ。しかも、特別なものだ」
「え…?」
にんまりと笑う御剣。
嫌な予感満載の僕。
「缶のラベルを読んでみろ」
指示されたそこには某かの手掛かりがあるのだろう。
僕はラベルの横文字を目で追う。
「…テ・オ…ショコラ…ティー?」
お洒落な飾り字でラベルにはそう記してある。
テ・オ・ショコラティー。
なんだかひどく甘そうな名前だ。
ラベルを読み上げると御剣は満足そうに頷き、さて成歩堂、と僕を呼んで、
「今日の日付を覚えているか?」
と。
答えようとして、気付いた。
「御剣…お前…もしかして…」
真宵ちゃんに?と言い掛けた所を指を振ってチッチッチ、と遮られた。
法廷でもムカつくけど日常はもっと腹立つな、これ。
「勘違いをしてくれるなよ、成歩堂。私はキミにと言ったのだからな」
チョコの名前をした紅茶。
僕にプレゼント。
今日はバレンタインデー。
色んな単語が頭を回る。
「来月、返事を待っているぞ。成歩堂龍一」
「ちょっ、なっ、御剣!?」
「用件は以上だ。時間を取らせてすまなかった」
少しも悪いと思ってない顔で、僕は上級検事室を追い出された。
腕に、甘い名前のお茶を抱えたまま。
「…ど、どうしよう」
【テ・オ・ショコラ】
紅茶の香りの想いを乗せて。
―――――――
初逆裁
私はミツナル派
ミツが紅茶党だと知ってちょっと嬉しかったので
きっとこの計画前後のミツさんはノイローゼちっくだったに違いない
ついでにテ・オ・ショコラと言うお茶は実在です
気になった方はGoogle先生に聞いてみてください